20210111

宇佐見りん「かか」。普段文章を読んで嫉妬することとかないけど、読んで初めて嫉妬みたいな感情に襲われた。これ。この本の内容理解なんてぜんぜんできてないのだど、この文体、この空気感。すごく新しかった。最近の本を読めてなかったから、新しくなんかないのかもしれないけど、でも新鮮で、そして、僕はこれを知っているような感じもした。村上春樹とか、三島由紀夫を読んでいるときとはまったく別の感情。村上春樹学生運動とか、あのあたりの時代の何かが基盤にあって、その基盤があった上で物語を書いているし、三島由紀夫も昭和って感じ。少し遠い気がしていた。だけど、「かか」にあったこの血なまぐさいこの感覚は、分からないけれど、僕の成分と同じ成分から発せられたものだった気がするんだ。僕はずっとこれが読みたかった。これが書きたかった。語り手の皮膚の下には、ちゃんと肉があると否応なく信じさせてしまうようなこの実感。僕たちが生きてきた時代が、歴史としてちゃんと根底に流れているような感覚がある。それを、ここまでの凄まじさで表現されたら、僕がやることなんて何一つも残っていないよ、消し飛ばされてしまうよ。