20210217

ねじまき鳥クロニクルのネタバレを含みます。

 

 

 

 

ねじまき鳥クロニクルをようやく読み終えました。長かった。浮気性なとこあるので、読んでいる間に色々他のものを読んでいたら、こんなに時間がかかった。そしてあんまり分かんなかった。読解力が不足している。

バットで相手を殴って終わるなんて、村上春樹で初めてじゃないかな? 完璧なスイングだった。という、あの文章でワタヤノボルを倒してしまった。羊をめぐる冒険では爆弾で羊を倒していたし、その他ではおそらく主人公の対立軸となる思想との衝突はなかった。しかしながら、バット。すごく肉体的だ。途中でバットで中国人を殺すみたいな描写が入る時に想像してしまったけど、バットで人の頭を殴る時の感触なんて考えたくもないくらい残虐なことだった。身体性があるから、同時に具体性も帯びる。ワタヤノボルという、決して抽象的ではない名前が「敵」として明確に設定されたことが今作における村上春樹の変化なのだと思うけれど、じゃあワタヤノボルは何だったんだと言われても、僕にはわからないので困っている。

壁を抜ける、という行為はきっと「風の歌を聴け」の最後の方に出てきたエピソードで、井戸の中に潜って行ったら、横穴になって、みたいなのと似ていた。処女作でぼんやりと思っていたことに具体的なイメージをつけたのが今作なのかもしれない。壁を抜けるというのは、個人の悩みや考えを、自分の中で考えて考えて、抽象的に捉え直すと他の人と悩みや考えと一致している、みたいな感覚に似ているなと思った。壁を抜けた先は、要するに僕たちの集合的無意識みたいなものなんだろうけれど、僕はどちらかというと SNS 的だと思った。井戸を掘って行ったらどこかで他人とつながる、というイメージは、僕が note の記事を書くときに考えていたことだ。僕はそういう井戸の底で抽象的ではいられないなと思って現在に至るわけです。でも、村上春樹は井戸の底で抽象的なまま、具体的なアクションを起こそうとする。バットで殴るわけです。そこが面白かったなあ。