20210718

竜とそばかすの姫のネタバレあります

 

 

 

 

 

竜とそばかすの姫を観てきた。後半、ずっと、ふざけるなって思いながら観ていた。

すずがDVから子どもを救おうとして、ネットに顔曝して歌って、何十万ものフォロワーがいるんですよ? そんなの、今後の人生ぜんぶ変えることになってしまったに違いないよ。普通の人ではいられなくなってしまう。やり直し可能だって言ってた「U」の世界だけど、現実の身体を曝したら現実と接続されてしまうに決まってた。ネットニュースで話題になって、みんなが自分を知ってるみたいな状態になる。そうじゃないかもしれないけど、あの瞬間のすずはそれくらいのものを天秤にかけなければならなかった。だから、最後、竜の中の子が「ぼくも戦おうって思った」って、言ってくれて、ぼくは嬉しくて泣いていた。すずが見せた勇気が、一人の男の子に勇気を与えてくれました。ぼくだってnote書いたり、読んだりして、こういうのすごい感じることがあるから分かるよ。規模はまったく違うけど、自分の人生を曝したときだけ、誰かと繋がれる瞬間があった。

でもね、それなのに、あの家族が救われるなんてぜんぜん思えないんだ。すずが父親を睨み付けて、その場の暴力は防げたけど、あれだけですべてが丸く解決されるわけなかった。これからもきっと暴力続いていくし、それが分かってたから少年は戦う決意をしたんだよ。彼のこれからの日常は何一つ変わることがなく、そのまんまのっぺり続いている。すずが助けようとしたことに意味があり、それによってあの少年のこれからの物語が変わっていくって、そりゃそうだけど、でも、まったく現実を変えることができないぼくたちは無力だった。ほんとうならDV自体をなくさなきゃいけなかったのに、そうしたいのに、解決策なんてまったく見えなくて、この映画が描いたことが最善なんだと分かってしまったので、ふざけるなって思った。ふざけんな現実、まじで。

このどうしようもなさの暴力で、泣きながら虚無感を抱いて、映画館を後にしました。