20210714

なぜ人は人を殺してはいけないのですか、と問われて答えられる気がしない。自分が殺されたくないから殺してはならないのだ、というのが一般的な回答になるのかもと思うけど、しっくりこないです。カタシロリビルドの中で、クジを引いて他人を救うために犠牲になるのは正しいか否か、みたいな思考実験が出てきてそのとき、「それは物語の質による」と名越先生は答えてた。その回答にぼくはほとんど完全に同意できてしまうのだけれど、本当に物語の質が正しさを決定できてしまうなら、おそらくそれは殺人ににだっていえるのではないかと思う。映画「ジョーカー」の中で、ジョーカーが初めて殺人を犯すシーンがあって、そこで病的なまでのカタルシスを感じてしまっている自分がいて、気持ちいい反面すごく怖かった。あのとき、ほとんどぼくはジョーカーと一体になっていて、やっちまえ、ってどこかで思ってた。その瞬間、殺人はもしかすると正当なものになってしまうし、そういうのが物語の怖さだった。物語なんてものを信じ始めた時点で、ぼくたちはある意味不道徳であることを強いられてるのではないかとすら思います。